その日は、あまりに暑かった。
夏の太陽が照りつける中、私は20歳代からの付き合いの相棒と釣りをしに、琵琶湖の和邇川河口へ向かった。
何年ぶりだろう、この湖に来るのは。
若かりし頃、ブラックバスを追い求めてこの地を訪れたのが最後だった。
時が経つにつれ、互いの生活は変わり、共に釣りに行く機会も減った。
しかし、その日、私たちは再びここに集まったのだ。
湖畔に立つと、あの頃と変わらぬ風景が広がっていた。
静かに揺れる水面、遠くに見える山並み。
何も変わっていないようでいて、確かに何かが変わっている。
そう、私たち自身だ。
年月は私たちに重みを与えたが、それでも、釣り竿を手にすると、あの頃の熱が蘇ってくる。
「懐かしいなあ、この場所」と相棒がつぶやく。
私も同感だった。
だが、その日は、魚たちが私たちに微笑むことはなかった。
何度もルアーを投げ入れるが、釣れたのはただの藻やゴミばかり。
汗が滲み出てくる。
日差しは一層強くなり、私たちは釣り竿を置いた。
「まあ、こんな日もあるさ」と相棒が笑う。
その笑顔に救われる思いがした。
昼時になり、私たちはラーメン藤 和邇店に向かった。
店内に入ると、冷房の効いた空気が心地よい。
席に座り、ラーメンを注文した。
ほどなくして、熱々のラーメンが運ばれてくる。
その香りが食欲をそそる。
一口すすれば、旨味が口いっぱいに広がる。
「うまいなあ」と相棒が感嘆する。
私も頷いた。
釣りは不調だったが、この一杯がすべてを帳消しにしてくれるようだった。
「次は、もう少し涼しい時期に来よう」と相棒が言う。
「そうだな」と私も応じる。
再び釣り竿を手に取る日を楽しみにしながら、私たちはラーメンを堪能した。
過ぎ去りし若き日の琵琶湖の風景と、和邇店のラーメンの味は、今でも鮮明に覚えている。
魚の顔は拝めず、悔しい1日だったが、懐かしい思い出に浸れた最上の1日であった。