この街はいつものようにざわついていた。
車のクラクションが響き渡り、遠くで犬が吠える。
私の胸が痛むのは、街の喧騒のせいではない。
心臓の鼓動が早くなる。
何かがおかしい。
冷や汗が背中を伝う。
だから、会社帰りに病院に行った。
白衣の医師が眉間にしわを寄せ、真剣な顔で結果を告げる。
「心臓には異常なし。でも血糖値が高い。糖尿病ですね。」
思わず笑ってしまった。
糖尿病だと?
私は毎日自転車で通勤し、休日にはランニングをしている。
そんな私が糖尿病だなんてあり得ない。
だが、医師の目は真剣だ。
「食事の量を減らして、運動量を増やしましょう。」
医師は続けた。
私は口を挟む。
「もう十分運動している。平日は自転車通勤、週末は走っている。」
医師はうなずきながら答えた。
「でも走るよりも歩く方が良いでしょう。なぜなら、走ると最初は有酸素運動ですが、途中から無酸素運動に切り替わるからです。」
有酸素運動と無酸素運動。
どちらも重要なものだと聞いているが、どうやらバランスが崩れていたらしい。
心臓は無事だったが、血糖値が警報を鳴らしていた。
これは私の体からの最後通告かもしれない。
私は決意を新たにした。
食事の量を減らし、運動の方法を見直す。
闇に隠れた敵を探すように、私は自分の生活を見直すことにした。
結局、私の命を守るのは他でもない、この私自身なのだ。
明日からは食べる量を減らし、走るのをやめて歩くことにしよう。
少しずつだが、変えていくしかない。
胸の痛みは、ただの警告に過ぎなかった。
だが、それは私に何かを変える必要があることを知らせる、最初のサインだったのだ。