それはある朝、胸と背中が燃えるように痛み出したことから始まった。
まるで長年煙たがっていた過去の記憶が、突然刃を向けてきたかのような衝撃だ。
とりあえず内科へ向かったが、そこでは心臓の異常は見当たらなかった。
「お前の心臓はまだ生きている」
と医者は言うが、胸の痛みはそれを否定するかのように続いている。
レントゲンに心電図、血液検査と、まるで犯罪現場の調査のように検査は進んだが、どれも決定打はない。
医者は静かに言った。
「もう少し様子を見ようか」
だが、俺にはその時間がなかった。
痛みは夜になっても続き、眠れない。
何かが俺の背骨をじわじわと削り取っているようだ。
もう我慢できない。
次は整形外科へと足を運んだ。
そこでの診断は、まるで刑事が最後に突きつける証拠のようだった。
「背骨が少しすり減っているね。これが神経に触れているかもしれない」
肋間神経痛の疑いが濃厚だと言われたが、俺はただ無言でうなずいた。
正直、そんなことはどうでもよかった。
ただ、この痛みが現実のものであることだけは確かだった。
薬局に向かい、俺に渡されたのは西洋医学ではなく、漢方薬。
いかにも「自然の力で治す」感を漂わせていた。
モダンな街並みの中で、この古風な薬が効果を発揮するかどうかは、正直疑わしかったが、背に腹は代えられない。
「2週間後にまた来てくれ」と医者は言ったが、俺はこの痛みと共にその日まで生き残る自信がなかった。
だが、こんなもんに負けるわけにはいかない。
俺の背骨がすり減ろうが、神経がどうだろうが、立ち向かうしかない。
漢方薬が効かなかったら、次はお祓いでも行こうかと思っている。