梅田の街に息子と二人、釣具店を目指して歩き始めた。
目的は、欲しいルアーを手に入れることだったが、実際には息子を外に連れ出すことが本当の狙いだった。
9月6日にオープンしたばかりのうめきた広場に差し掛かると、新しい広場の賑わいと、ビル群の隙間に広がる緑が目に飛び込んできた。
気温は高いが、広場を歩く人々は皆楽しそうだ。
しかし、ふと隣を見ると、息子の足取りが重くなっている。
「足がしんどい…」と、ぽつりと漏らした彼の言葉にハッとする。
そうだ、息子はずっと家にいた。
久しぶりの外出で、慣れない場所と人混み、そしてこの距離を歩くのは想像以上に負担だったのだろう。
釣具店はもう少し先にあるが、ここで無理をさせても意味がない。
結局、私たちは釣具店に辿り着くことなく、引き返すことにした。
帰り道、息子は少し疲れた様子を見せていたが、なんとなく満足そうでもあった。
外に出て、ここまで来たことが一つの成果だ。
「今日はここまでだな。次はもっと遠くまで行けるよ」
と声をかけると、彼は少し照れくさそうに笑った。
歩き出すこと自体が大切だと感じた一日だった。