古びた釣具箱の奥から、40年の時を経て再び姿を現したのは、かつて「Diamond」と呼ばれたリールだった。
このスピニングリール、見覚えのある者は少ないだろう。
私が小学生の頃から使い続けていたものだ。
月日が経ち、釣り場も変わり、私自身も変わったが、このリールだけは静かにその役割を果たし続けている。
何十年もの釣りの時間が凝縮されたこのリールは、過去の釣行の記憶を呼び覚ます。
特徴的なのは、リールのお尻に付いたドラグだ。
現代のリールと比べると、確かに古めかしく見えるかもしれないが、その機能は未だに健在だ。
しっかりと手に馴染み、ドラグの感触は、まるで長い年月を経て磨かれた熟練の道具のようだ。
今、このリールを手にした瞬間、ヤエン釣りの可能性を感じた。
ヤエン釣りは、アオリイカを狙うための繊細な技術と集中力が要求される釣り。
緩やかに巻き上げ、相手との静かな駆け引きが繰り広げられるその瞬間、このリールが生きるのだ。
潮の香り、釣り場の静寂、そして水面に浮かぶ魚影。
このリールと共に過ごしてきた無数の瞬間が、再び俺の目の前に広がる。
何も変わらないようで、全てが変わった40年。
だが、このリールはその変わらないものの一つだ。
釣具の進化は目まぐるしいが、時に過去の道具に頼ることで、新たな価値を見出すことがある。
このDiamondのリールもその一つだろう。
40年の年月を超え、再び海に挑む準備が整った。