俺は、糖尿病を宣告されてから、食生活をがらりと変えた。
まず、食事の順番だ。
医者に「野菜から食べるように」と言われた。
血糖値を急激に上げないための、いわばルールだ。
しかし、ただのサラダじゃ物足りない。
淡々とした生活にパンチが欲しい。
そんな俺を救ったのが、「ハリッサ」という万能調味料だった。
ハリッサは北アフリカ生まれのスパイスペーストだ。
唐辛子をベースに、ニンニク、クミン、コリアンダーといったスパイスが絶妙にブレンドされ、辛味と香りが混じり合うその一瓶には、まるで無法地帯のようなエネルギーが詰まっている。
一度その味を知れば、もう後戻りはできない。
サラダにハリッサをひとさじ。
それだけで、つまらない食卓がまるで戦場のように活気づく。
スパイスの香りが食欲をそそり、辛味が体に火をつけるようにエネルギーを湧き上がらせる。
食事制限に息が詰まることもあるが、このスパイスペーストが俺を解放する。
だが、ハリッサの力はサラダだけにとどまらない。
魚や肉にだってその魔法はかかる。
野菜中心の生活をしなければならない俺だが、焼いたチキンやグリルした魚にハリッサを塗れば、まるで豪華なフルコースに変わる。
辛さの奥にある深みが、料理に新たな表情を与えてくれるのだ。
俺はこうして毎日の食事に変化をもたらしながら、血糖値という敵と戦っている。
そして、その戦いの最前線にはいつもハリッサがいる。
糖尿病は確かに厄介だ。
けれど、だからこそ、食事を楽しむための知恵を絞る。
ハリッサはその知恵の象徴だ。
食事の時間が無味乾燥な「作業」ではなく、「楽しみ」に変わる瞬間を与えてくれる。
おそらく、俺にとってハリッサはただのスパイスじゃない。
これは、俺の体と心を守るための武器だ。
毎日の食事を通して、少しでも健康を取り戻すための仲間。
その辛味と香りに込められたパワーが、俺の生活に火を灯し続けている。