難波の街を歩いていると、どこか懐かしい気持ちがこみ上げてきた。
息子と俺は、まるで昔からの習慣のように、北極星に足を向けていた。
西心斎橋の古い建物、オムライスの本店だ。
長い歴史を持ちながらも、その風情は変わらず、どっしりと時を超えてそこにある。
「ここが本店なんやね」と、息子がポケモンGOを片手に歩きながら言った。
彼がこのゲームに熱中している姿は、つい最近まで引きこもっていたことを忘れさせるほど自然で、俺は少し驚きながらも、喜びを隠せなかった。
店に入ると、古き良き時代の温かみが漂っていた。
木の柱、淡い照明、そして穏やかな空気。
俺たちは静かに席につき、メニューを広げたが、心の中ではすでに決まっていた。
オムライスに唐揚げ、サラダ。
息子はオレンジジュースを頼みながら、ポケモンGOの話に夢中になっていた。
「この辺り、ザシアンが出るんやって。あとで少し探してみようかな」と、彼が無邪気に言った。
その言葉を聞いて、俺は軽く笑いながら「ええやん」と返す。
食事が運ばれてくる間も、息子はスマホの画面をちらちらと見つつ、ポケモンの話を続けていた。
以前の彼では考えられない、外へ出て人と話をしながらゲームを楽しむ姿がそこにあった。
オムライスが運ばれてくると、その美しさに思わず息を飲んだ。
ふんわりとした卵の中に包まれたライス、濃厚なデミグラスソースがたっぷりとかかっている。
唐揚げもカリッと揚がっていて、食欲をそそる香りが広がる。
息子は一口オムライスを口に運び、「おいしい」と満足そうに言った。
「この辺にポケストップがいくつかあるから、帰りに寄っていこう」と彼は再びゲームの話を始めた。
俺も興味を持ちつつ、食事を続けた。
サラダのシャキシャキとした新鮮な食感が心地よく、唐揚げのジューシーさに舌鼓を打ちながら、ふたりで自然な会話を楽しんだ。
店の雰囲気は昔から変わらない。
どこか懐かしさを感じる店内で、俺たちは穏やかな時間を過ごした。
息子とこんなふうに食事をし、ポケモンの話をしながら笑う日が来るなんて、少し前までは想像もできなかった。
食事を終えた俺たちは店を出ると、息子がポケモンGOの地図を開いて、どこに行くかを考えていた。
「この後、せっかくやからもう少し心斎橋を歩いてみようか」と、彼が提案してきた。
その言葉に俺は頷きながら、再び街を歩き出した。
北極星――その古き良き建物の前で、俺たちは少し立ち止まり、再びそこに戻る日を心の中で誓った。