ふと、京橋での飲み会の通知が舞い込んできた。
今やあの会社も昔話のようだが、どういうわけかこの街が俺を呼んでいる。
心なしか秋の風も少し冷たくなり、大阪の街が見知らぬ顔を並べ始めた頃合いだ。
糖尿病患者の標語が頭をよぎる。
「飲む前に歩け。」言われずとも承知だ。
足元のアスファルトに音を刻み、ひとまず大阪城公園まで歩くことにした。
昼過ぎの大阪城はまるで異国。
観光客たちのざわめきに包まれ、かつての静けさはどこかに消え去っていた。
目を閉じれば、城の天守閣が往年の姿を思い出させてくれる。
それでも時代は変わり、人の波も風景もまた、俺の記憶とは異なっている。
変わらないのはその石垣と、何百年も前からそこに佇む大樹の存在だけ。
外国人観光客たちの笑い声が遠くで響き、俺は一歩ずつ石畳を踏みしめていた。
大阪城ホールの近くまで来ると、異様な熱気が漂っている。
DREAMS COME TRUEのライブだと分かるまで、俺は時間を無駄にするほど鈍くはない。
その盛況ぶりは、かつての自分たちが若かった頃の熱気を思い出させてくれた。
青い看板の文字が瞬き、歓声があちらこちらから湧き上がる。
まるで青春の残像だ。
足を京橋へと向けた。
飲み会が始まれば、過去と現在の記憶が入り混じることだろう。
俺の知る街は変わり果てたが、それでも時折こうして、あの頃の自分が少しだけ戻ってくる。
今日はそれだけで十分だ。