私がキッチンに立ったのは、息子のためにふわふわのフレンチトーストを作ろうと思ったからだ。
準備は至ってシンプル。
卵を割り、牛乳を注ぎ、砂糖を適量。
バニラエッセンスの一滴が香りを引き立てる。
音も立てずに、ただ静かにボウルの中でかき混ぜた。
「砂糖の量はお好みで調整しろ」と自分に言い聞かせ、深く息を吸った。
準備は整った。
次はパン。
今日はお米パンと小麦パン、二種類のパンを使う。
耳を取ったパンを半分に切り、卵液の中へ静かに浸す。
この瞬間が大切だ。
全てが計算された動きで行われる。
染み込む、染み込む。
500Wの電子レンジを設定し、片面1分、そしてひっくり返してもう1分。
卵液を吸ったパンは、まるでスポンジのようにふわりと膨らむ。
次のステップはフライパンだ。
極弱火、これが肝心だ。
バターを静かに溶かし、パンを投入。
蓋をして5分、じっくり蒸し焼きにする。
弱火でじわじわと熱を加えることで、フレンチトーストはふわふわに仕上がる。
焦げ目がついたら、そっと裏返し、さらに5分。
すべての動作が正確で、無駄がない。
出来上がりだ。
息子が何もつけずに一口。
彼の表情が全てを物語っていた。「おいしい。」お米パンのもっちりとした食感が口の中で広がり、小麦パンも負けていない。
残り半分には蜂蜜を添え、さらなる甘みが加わった。
今日のフレンチトーストは、ただの朝食ではない。
彼との絆を再確認する瞬間だった。