今日は引きこもりの息子が、久々に外の空気を吸うことに応じた。
ポケモンGOの力は侮れない。
だが、ゲームが目的であれ、家の中で沈み込んでいた息子が、外へ出ること自体が奇跡に近い。
家を出てからは思った以上に距離を歩いた。
いつもなら「疲れた」と口にしそうな息子が、今日は違った。
まるで、別の生き物にでもなったかのように、足を運んでいた。
そして、その表情には久しぶりの上機嫌が見て取れた。
帰宅後、案の定「足が疲れた」と息子が言う。
正直なところ、この時点で「もう動きたくない」と言うだろうと思っていた。
だが、試しに銭湯に誘ってみた。
すると、予想に反して「行く」という返事。
驚きはしたが、拒否されないのならばと、すぐに準備を整えた。
銭湯に到着すると、息子は最初こそ無口だったが、湯に浸かるとリラックスしたのか、再び上機嫌な様子だった。
その時だった。
日本酒風呂に差し掛かった我々の前に、一升瓶を抱えたスタッフが現れ、「お子さんは酔っ払うかもしれませんので、近くによらないでください」と声を掛けてきた。
その瞬間、息子の表情が硬直した。
まるで何かに殴られたかのように、彼の顔から笑みが消え、放心状態に陥った。
いつもの息子の特性が露わになる瞬間だった。
だが、それでも彼は崩れなかった。
しばらくして、また息子の顔には笑みが戻り、日常に戻ったかのようだった。
結局、銭湯の湯の温かさに癒されながら、親子の一日が静かに幕を下ろした。
息子とのこうした外出は、まだまだ少ない。
しかし、確実に進展があると感じさせる一日だった。
酔っ払うことなく、我々は無事に家路についた。