洗濯機が壊れた。
もう十年、いや、それ以上かもしれない。
日立の「ビートウォッシュ」という名の相棒だ。
こいつが毎日、文句ひとつ言わずに私の衣服をきれいにしてくれていた。
しかし、去年からだった、あの異音が鳴り出したのは。。。
まるで遠くから聞こえる死神の足音のように、何かが少しずつ、確実に壊れていく音だった。
それでも、私はこいつを使い続けた。
諦めるには早すぎたからだ。
音は日を追うごとに大きくなり、深くなっていった。
時には、まるで心臓の鼓動が聞こえるような感覚に陥ることさえあった。
しかし、奇妙なことに、それでもビートウォッシュは動き続けた。
頑丈で、力強く、私の家に残された最後の頼れる存在だった。
だが、すべてのものには終わりがある。
こいつも例外ではなかった。
ある日、ふと気がついた。
もう、その異音すら聞こえなくなっていた。
静かだ。。。
だが、それはただの静けさではなかった。
それは、全てが終わった静けさだった。
とうとうビートウォッシュはその使命を全うし、沈黙したのだ。。。
私が向かったのはヤマダ電機。
冷たい蛍光灯の下、新しい洗濯機が無数に並んでいた。
最新の機能、美しいデザイン、そして何よりも信頼性。
選んだのは、またしても日立のビートウォッシュだ。
古い相棒と同じ名前を持つが、今回は10キロの大容量モデルだ。
前の7キロからのアップグレード。
まるで、過去の自分に別れを告げ、新しい一歩を踏み出すような気分だった。
新しいビートウォッシュは、前のものよりも少し大きく、そして確かに頼りがいがありそうだ。
その静かな存在感には、まるで長い旅を共にする相棒のような信頼感があった。
今日、こいつが到着する予定だ。
玄関先に運び込まれるその瞬間を、私は心のどこかで楽しみにしている。
だが、その一方で、私は少しばかりの悲しみも感じている。
10年間、共に過ごした古いビートウォッシュとの別れは、思った以上に重く感じるものだ。
しかし、全ては移り変わる。
この新しいビートウォッシュも、いつかはその役割を終える日が来るだろう。
だが、それまでの間、こいつと共に過ごす時間を、大切にしたい。
鉄と水が織りなす音楽を、もう少しだけ聴き続けたいと思う。