ダッチオーブンの中には、まだ昨晩の香りが残っていた。
リンゴチップの甘い煙が染みついた鋳鉄の底に、今夜の獲物を放り込む。
買ってきたばかりの焼き鳥が、その重厚な蓋の下で次第に煙に包まれていくのを見つめながら、俺は薄ら笑いを浮かべた。
洗わずに置いていた鍋の中で、新しい命が吹き込まれる。
こんなにも簡単に、こんなにも深い味わいが得られるとは。
火を入れてしばらくすると、甘く香ばしい香りがキッチンに漂い始めた。
煙が俺の鼻孔をくすぐり、胃袋が反応を見せる。
待ちきれずに蓋を開けると、黄金色に輝く焼き鳥がそこにいた。
ほんのりとしたリンゴの香りが肉の旨味を引き立て、まるで高級レストランで供される一品のようだった。
一口食べると、その味わいが口の中に広がる。
煙が織りなす深い味わいとリンゴの甘さが絶妙に調和している。
買ってきたばかりの焼き鳥が、まるで別物に変わっていた。
俺は黙ってハイボールを一口飲み込み、もう一本手に取る。
これはもう、ただの食事ではない。
俺のための儀式なのだ。