助手席には息子が座っていた。
直前で「やっぱりやめとく」と言うのが常だった息子。
今回は違った。
そんな彼の様子を見て、私は驚いた。
道中、息子は車酔いして辛そうだったが、それでも一言も文句を言わなかった。
キャンプ場に着くと、テントを設営した。
息子はテントの中に引きこもることもなく、椅子に腰掛け楽しんでいるようだった。
晩飯はラム肉と野菜をダッチオーブンでじっくり煮込んだものにした。
香りが漂い、夜の闇に溶け込んでいく。
息子はその味に 「美味しい」舌鼓を打った。
キャンプ場の夜は山頂ならではの涼しさがあり、湿度も低くカラッとしていた。
星が一面に広がる夜空は美しく、私たちを包み込む静寂が心地よかった。
ランタンの明かりが揺れる中、息子は「楽しかった」と言った。
その言葉が、私の胸に深く突き刺さった。
私は嬉しかった。
息子も同じ思いだったのだろう。
翌朝、鳥のさえずりとともに目を覚ました。
その日の朝食はシンプルにベーコンとパンを焼いたものだったが、息子は「これもキャンプだから特別だ」と言って笑った。
キャンプ場の片付けを終え、帰路につく準備をしているとき、私はふと「次は登山でもするか?」と尋ねると、息子は「いや、それはさすがに勘弁」と笑った。
車に乗り込む前、息子は立ち止まり「またキャンプしよう」と、彼はつぶやいた。
その言葉が私の心に響いた。
エンジンをかけ、私たちは帰路についた。
息子の顔には満足そうな表情が浮かんでいた。
それを見て、私は心の中で微笑んだ。
次回のキャンプは、息子と相談して虫がいなくなる秋頃に行く予定である。